ユーロを一から学ぼう

ヨーロッパの地域統合体EUと欧州統一通貨であるユーロについての基礎知識。

ユーロを一から学ぼう

EUが誕生したわけ

EUに加盟している各国では、毎年5月9日を「ヨーロッパ・デー」として様々な催しを行います。この日は、1950年にフランスの外相であったロベルト・シューマンが記者会見の席で、「フランスとドイツの石炭および鉄鋼の生産を共同で管理する」という提案を発表した日です(シューマン宣言)。国を超えて共同管理することで、資源を巡っての紛争が絶えなかったドイツ・フランス間で、戦争を起こせないようにするためのものでした。この日はヨーロッパが軍事的対立を乗り越えて「欧州統合」への実現へむけて具体的な第一歩を踏み出した日でもあったと言われています。
このシューマンの提案は1952年に「欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)」を誕生させ、さらに欧州経済共同体(EEC)、欧州原子力共同体(EAEC)が設立され、1967年に3共同体の執行・決定機関などが統合されてEC(欧州共同体)となりました。しかしECは常に順風満帆であったわけではなく、経済面だけの統合体では、アメリカやソ連などの強国と肩を並べ、世界で優位を保っていくことはできないと危惧されるようになってきました。1992年2月7日、オランダのマーストリヒトにおいて調印された「マーストリヒト条約」は、正式名称を「欧州連合に関する条約」といいます。ECを母体として、さらに欧州統一通貨ユーロ(Euro)の導入、従来の欧州の経済的協力だけでなく外交や安全保障などにおける政治的な統合、さらに司法・内政分野での協力体制をも新たに制定した欧州連合(EU)が誕生しました。当時のECの加盟国はすべてEUに加盟しました。
加盟国も5次の拡大を経て現在28ヶ国になりました。戦争を回避し平和の継続を願う欧州統合体は、ヨーロッパ全域だけでなく社会主義国の東欧諸国まで巻き込んで、加盟を希望する国が増えるようになりました。自国の政治形態を変え、今まで慣れ親しんだ歴史ある自国の通貨をすてて統一通貨ユーロへ変換させる、ということは、そう簡単には実現しにくいことです。「夢物語」とまで言われた「欧州統合」を実現させた主な理由のひとつとして、ヨーロッパの国々がキリスト教という共通の宗教をもち、歴史的に伝統・文化・習慣の基盤が似ていたということはとても大きいでしょう。また、ヨーロッパの歴史は長い戦争の歴史でした。特に第一次・第二次世界大戦の惨禍は、大きなひとつの大陸であるヨーロッパ全体を荒廃させ、その悲惨な共通の経験は、ヨーロッパの人たちに「戦争のない、恒久平和実現への願い」を一層強くさせました。さらに、嘗ては世界の文化や経済の中心でもあったヨーロッパが、アメリカの強力なドルや小さな島国でありながら経済大国と言われるまでに成長した日本の円に負けるわけにはいかない、という危機感が、「歴史的大実験」を推し進めた原動力のひとつであるともいわれています。
この「不戦と平和を継続させる共同体」を実現させたことは、「EUは欧州を戦争の大陸から平和の大陸に変革させる重要な役割を果たした」として、2012年ノーベル平和賞がEUに授与されました。こうして1950年5月9日は欧州統合にとってすべての始まりであるとして、1985年にミラノで開催された欧州理事会(EU首脳会議)は、5月9日を「ヨーロッパ・デー」として祝うことを決定したのです。